インドの全ての子どもが健康でいられるよう行動する活動家

著者: Leah RodriguezPia Gralki

Sahiba Chawdhary for Global Citizen

プリヤ・プラカシュさんとHealthSetGoについて、私たちの新しいポッドキャスト「Powering the Movement」のエピソード2でさらに詳しく知ることができます。今すぐ Apple Podcasts、Spotify、またはその他のお気に入りのポッドキャストサービスでチェックしてください。


インドで育ったプリヤ・プラカシュさんは、家族の愛情を食事で感じていましたが、やがて体重が増え、6年生から大学に行くまで、同級生からひどくからかわれる日々が続きました。

「本当に色々なことを言われました」とプラカシュさんはGlobal Citizenに語ります。「デブとか、ブサイクとか言われて、自分には価値がないような気持ちになってしまって、それが自分の精神面にとても大きな影響を与えました」。

当時は助けになる存在がいなかったと語り、大人になるにつれて自分が変わり、自分自身で人生を変えることを決意したそうです。習慣を見直し、大学では重量挙げも始め、どんどん健康的なライフスタイルに変わっていきました。

現在28歳の彼女は、HealthSetGoの創設者でありCEOです。HealthSetGoは、技術と医療を組み合わせて、子を持つ親や医師、学校、そして政府がデータに基づいた意思決定をし、子どもたちの健康と人生をより良くできるようサポートする団体です。

プリヤ・プラカシュ、2019年11月7日にポートレート撮影。
Image: Sahiba Chawdhary for Global Citizen

プラカシュさんは、Global Citizen賞:Cisco若手リーダーシップ賞の最終候補に残った若手活動家5名のうちのひとりです。この賞は、世界中で素晴らしい活動をしている若者たちを称え、サポートするために2018年に設立されました。

この賞は、12月13日にロンドンのロイヤル・アルバート・ホールで行われるGlobal Citizen賞授賞式で贈呈され、世界中で後日放送される予定です。受賞者には、活動をさらに広げるための資金として、なんと25万ドルもの賞金が贈られます。

彼女は母親や、学校での子どもの肥満問題への取り組みに人生をかけたアメリカの元ファーストレディ、ミシェル・オバマなど、周囲の強い女性たちに大きく影響を受けてきたと言います。そして今、プラカシュさんは同じように、子どもたちが精神・身体の健康的な課題で苦しむことがないよう防止することに全力を注いでいます。

プリヤ・プラカシュが生徒たちに“HealthSetGo”ボックスを見せて説明。楽しいアクティビティで手洗いや不健康な食について学べる教材入り。
Image: Sahiba Chawdhary for Global Citizen

インド、グルグラムに拠点を持つHealthSetGoは、インドのすべての子どもが健康で病気なく育つことを目指しています。

「私のビジョンは、インドの女の子も子どもも、私が学生時代に経験したような思いをもう二度としなくてもいいようにすることです」とプラカシュさんは語ります。

「インドの子ども一人ひとりが、健康的なライフスタイルを実現できるように支えやガイダンスを得られるべきで、それが子どもたちの可能性を最大限に引き出すだけでなく、私たちの国の健康全体にも大きな影響をもたらし、長期的な結果が期待できると思います」と彼女は付け加えました。

プラカシュさんはCisco若手リーダーシップ賞を受賞したら、その資金でさらに多くの人に医療サービスを届け、HealthSetGo自体もサステナブルに運営できるモデルを作る計画です。

「私の極貧終結への努力は、すべての子どもが健康でいられる社会を実現し、そのことによって2030年までに貧困と健康の両方の課題を一緒に解決することです」とプラカシュさんは話しています。

HealthSetGoは、医療やその教育を受ける資源や費用が不足している学校の溝を埋める役割も果たしています。これまでにインド77都市以上で、20万人以上の子どもと親たちに影響を与えてきましたが、2023年までに100万人に届けることを目標としています。

(L) シュリラム・ミレニアムスクールの掲示板に健康教育資料(2019年11月7日)。 (R) 生徒が話している様子。
Image: Sahiba Chawdhary for Global Citizen

HealthSetGoは、学校のすべての児童を対象に健康診断を行い、どんな病気や問題があるか早期発見し、必要に応じて予防接種や薬の処方、メガネなどの必需品を提供しています。

健診の際には、医師が子どもの健康データを電子的に記録し、保護者がリアルタイムで子どもの状態を知ることができるようになっています。HealthSetGoを利用すれば、2歳から17歳まで子どもの医療記録をしっかり管理できます。

学校にも「ヘルスレポートカード」を提供し、健康課題を学校単位で把握できるようにしています。

プラカシュさんがアーンドラ・プラデーシュ州の公立学校を訪れた際、子どもたちは一度も医師にかかった経験がなかったそうです。多くの女の子が慢性的な貧血だったり、視力が悪くて黒板や本が見えない子や、ビタミン不足や皮膚病に悩む子どもがたくさんいることなどを知り、地域の人々もショックを受けていました。

「保護者たちはみんなで集まり、喜びのあまり涙を流していました。子どもたちが初めて医師に診てもらい、これまで高額で手に入れられなかった薬を受け取ることができたのです」とプラカシュさんは付け加えました。

HealthSetGoは、病気予防のための習慣の変更や健康カリキュラムの普及にも力を入れています。

HealthSetGoは全校の生徒の健康をチェックし、病気発見・診断、ワクチン接種や薬の処方、メガネなど必要なものも提供!
Image: Sahiba Chawdhary for Global Citizen

団体は毎月「HealthSetGo」ボックスと呼ばれる体験型学習カリキュラムを学校に届けています。年齢ごとに内容が調整されており、体の健康や心の健康、衛生・公衆衛生、食事と栄養について楽しく学べるように作られています。この「HealthSetGo」ボックスには、先生たちが手洗いや不健康な食べ物がもたらすリスクを伝える楽しいアクティビティも含まれています。

「こうした取り組みこそが子どもたちを力づけ、やがては私たちが持続可能な開発目標を達成し、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジを実現するための変化につながります」と彼女は話しています。

「HealthSetGo」カリキュラムを導入した学校では、すでに変化が現れています。運営側は食堂のメニューを見直し、子どもたちは前よりも健康的な食事を選ぶようになっているとプラカシュさんは語ります。子どもたちは親にジャンクフードをねだるのもやめました。

「病気になってから治すという考えではうまくいきません」とプラカシュさんは言います。「健康を育てる視点が必要で、そのためには幼い頃から始めることが大切です。小さいうちから健康的な習慣を身につけて、毎日の生活を変えていくことが今、私たちの国には欠かせません」。

インドは世界でも3番目に肥満人口が多い国で、子どもの肥満も増加しています。また、ガンの発生率心臓病もトップクラスの高さです。非感染性疾患は、インドの回避可能な死亡の60%の原因になっており、毎年5,500万人以上が医療費のために貧困に陥っている、とプラカシュさんは指摘しています。

プラカシュさんによると、インドの多くの子どもたちが栄養失調や貧血、腸チフス、2型糖尿病、喘息、そして他の慢性呼吸器疾患などを経験しています。特に最近、子どもたちの2型糖尿病が増えていることにプラカシュさんは気づきました。この病気は本来、大人になってから発症しやすいものです。

早い段階で病気を発見して診断できれば、インドだけでなく世界中の膨大な金額の節約につながるだけでなく、何百万人もの人の生活の質も上がります。プラカシュさんは、政策レベルでさらに多くの前向きな決断がなされ、社会のあらゆる分野が連携して健康の課題に取り組んでほしいと考えています。

プラカシュさんはこう語ります。「私たちはこの世界で生きているのだから、自分たちだけのためでなく、次の世代が今よりもっと良い世界で暮らせるように責任を持っていきたいです」。