教育は、基本的なレベルでは、子どもたちに大きな可能性をもたらす貴重な機会です。学校に通うことで得られる社会的・感情的なメリットに加え、たとえ基礎的な読解スキルでも、収入を大きく伸ばすことができ、極貧から抜け出すうえでの命綱にもなります。

しかし、現在、世界中で2億2200万人以上の子どもたちが紛争地域で暮らしており、学ぶことは権利ではなく贅沢なことのように扱われています。

「大きな紛争が起きている間は、家の外に出ること自体がとても危険です」と、Education Cannot Wait(ECW:教育を後回しにはできない)のエグゼクティブディレクター、ヤスミン・シェリフさんはGlobal Citizenに語っています。「男の子は武装勢力に誘拐される危険があり、女の子は性的虐待を受けることもあります。生活環境が大きく変わってしまい、教育などの基本的なサービスにもアクセスできなくなります」

Education Cannot Waitは、国連が運営する、緊急事態や長期的な危機下における教育の機会を守るためのグローバル基金です。コミュニティと協力しながら、失われた教育がもたらす短期的・長期的両方の影響に対処し、学ぶチャンスや学校への出席率を高めることを目標にしています。

「難民として暮らす子どもの平均年齢は17歳です。青春時代のその期間に教育を遅らせることはできません」とシェリフさんは話しています。

今日では、紛争が激化している状況に加えて、コロナ禍や気候変動、格差の拡大といった問題も重なり、安全で安定した教育へのアクセスを守ることは大きな課題になっています。ガザの路上でも、ウクライナ東部でも、戦争の中にいる子どもたちは不安定な環境に置かれ、学校に行けない時間が長引くことで、社会性の育成学力の成長にも悪影響が出てしまいます。

ECWは、子どもたちの将来を妨げるのは数学や読解スキルの喪失だけでなく、爆撃や攻撃など現実の暴力があることも理解しています。そのため、ECWのトラウマケアに配慮したプログラムは教育を包括的に支えるアプローチを取っています。

ブルキナファソでは、武装勢力から暴力を受けるリスクがある生徒たちのために、ECWは一時的な教室を作ったり、補習クラスを開いたり、先生たちに心理社会的サポートの研修も実施しています。

「ナイジェリアでボコ・ハラムに誘拐された女の子たちと活動した時、心理社会的サービスと学習プログラムの効果をしっかり感じました」とシェリフさんは語ります。「数年後の変化は本当に素晴らしいものでした。最初は自信も教育スキルもなかった女の子たちが、自分らしさを取り戻し、回復することができました。今は彼女たち自身がメンターとして他の子を支えています」

さらに「紛争地域の子どもたちは、本当に深い心の傷を負っています。教育の一環として、メンタルヘルスや心理社会的サービスへ投資することが絶対に必要です」と語っています。

教育施設が破壊されてしまうと、子どもたちの学びの機会は一瞬で絶たれてしまいます。教室が瓦礫になれば学校にも行けません。エチオピア北部では2年間の紛争の末、85%もの学校が被害を受け、ウクライナでは3500校以上が被害を受け、340校以上が完全に破壊されました。ガザでは、子どもたちは丸一年も学校に行けていません推定62万5千人の若者たちが将来に必要な教育を受けられずにいるのです。

たとえ学校に通えても、紛争のただ中で暮らす子どもたちは質の高い教育を手に入れるために他にもたくさんの壁と向き合っています。スーダンでは、紛争や政治の不安定さが原因で多くの人が避難しており、教室はいっぱいで、資金も足りず、先生の数も足りません。

それに加えて、武装グループに無理やり兵士にされたり、学校で攻撃される不安もぬぐえません。

2023年だけでも、シリアでは78の教育施設が攻撃の標的となり、内戦開始以来2万2998人以上の子どもが命を落としています。他にも、コンゴ民主共和国やイエメンなどの不安定な国でも、武装勢力が学校を占拠して、使えなくしてしまうケースもあります。

「お母さんたちが教育を受けられないと、自分の子どもを助けることも難しくなります。女の子は学校に通えないと児童婚になることもあります。学校は守ってくれる場所でもあるんです。学校に行かない男の子は、お金を稼ごうと兵士になろうとすることもあります」とシェリフさん。「私はいつも、人々から力を奪いたいなら、学校に行かせなければいいと言っています」

研究者たちは何十年も前から教育と貧困の明確な関わりを指摘しています。学ぶ場がなければ、仕事についたり自分でチャンスを作ったりするための大事なスキルが身につきません。大人になっても貧困から抜け出せず、自分の子どもも学校に通わせられなくなります。

特に途上国の女の子たちは、社会的・経済的なハードルが多く、学校に行けないことが多いです。

世界全体で1億1900万人の女の子たちが教育を受けられていません。紛争が続く地域では、その数は2倍以上にも及びます。危機の時には家庭が男の子の教育を優先しがちで、女の子には家事の手伝いが求められるからです。その結果、学校に通わない女の子は早期妊娠や児童婚のリスクが高まり、経済的自立のチャンスが大きく奪われてしまいます。

「アフガニスタンでは、タリバンの支配以前から学校に行けなかった女の子も多く、彼女たちが学びを取り戻せるよう支援しています。私たちは、メンタルヘルス支援や栄養のある食事、短期間で学習できる加速プログラムも取り入れています」とシェリフさん。「教育を受けられないことが人生に与える影響を少しでも減らすために、できるだけ早く手を差し伸べることが大切です」

ECWは、紛争地域の子どもたちの教育支援の中で、男女平等にも特に力を入れています。アフガニスタンでは数十年かけて進んだ女の子の教育への道が、タリバンによる現在の中等教育禁止で一気に失われました。ECWは、非公式の教育、短期間集中の学習プログラム、地域密着型サービスを地方に広げています。

こうした取り組みは、紛争地帯のあちこちで必要とされています。特に新型コロナウイルス感染症のパンデミックがもたらした影響を受けて、ユニセフの発表によると、世界中で2億5,000万人の子どもたちが学校に通えていない状況が続いており、彼らを再び教育の場に戻すための取り組みも停滞しています。しかし、教室で先生たちとしっかり学ぶことも、自宅でオンライン学習プラットフォームを活用することも、Education Cannot Waitはどんな環境にも合わせて変化しながら、グローバル目標4を実現するために前進し続けています。

「教育が土台になければ、極貧を終結することなんてできません。女の子たちにきちんと教育のチャンスがなければ、男女平等も実現しません。 医師や看護師がいなければ公共の健康課題にも対応できません」と、シェリフさんはGlobal Citizenに語っています。「教育は、人間が持っている可能性をすべて引き出すカギなんです」

Global Citizenの仲間として、教育へのアクセスや資金サポートを求めて声を上げることは、紛争地域などでEducation Cannot Waitが活動を続ける上で、最も大きな力になります。

今すぐGlobal Citizenの運動に参加して教育のために行動を起こすか、Education Cannot Waitにオンラインで寄付して応援しましょう。

Editorial

貧困の撲滅

紛争地の子どもに教育が必要な理由