Ayana*は、エチオピアのアムハラ州出身の若い女性。自分の未来を切り開こうと、本気で頑張ってきました。大学を卒業していて、会計やファイナンスのスキルもあり、英語も堪能。しかしエチオピアで紛争が続くなか、家族を支えられるような安定して給与のいい仕事を見つけるのは簡単じゃありませんでした。
つまりAyanaは、東南アジアを拠点にサイバー詐欺を行う犯罪グループにとって、格好のターゲットだったんです。
「タイの国際企業で働く求人をネットで見つけたんです。『エチオピア人ならビザが無料で取れる』って書いてあって」とAyanaはGlobal Citizenに話しました。「仕事はパソコン作業だけだって言われました」
その求人は、アフリカやアジア、その他の地域の国々から若い専門職の人たちをおびき寄せ、強制労働に追い込むための罠でした。特に狙われていたのは、パソコンスキルがあって英語が話せる人たち。Ayanaはタイに到着した後、違法にラオスへ移送され、1年半にわたってSNSで人をだます詐欺を強いられました。
今年は、世界的に奴隷制廃止を掲げた重要な国際合意である奴隷条約の100周年にあたります。国や企業が公正な労働慣行を進めてきた100年の歩みがあっても、搾取はなくなっていません。むしろ形を変え、社会の影で生き延びているんです。
「多くの国は法律上は奴隷制を廃止しました。でも、その“現れ”は今も生き続けていますし、新しいテクノロジーの登場で状況はさらに複雑になっています」国連の現代奴隷制に関する特別報告者、小保方智也氏はGlobal Citizenにそう語りました。
奴隷制は世界で何百万人もの人に影響している
1926年の奴隷条約以前は、血統に基づく奴隷制— 特定の民族や家系、社会階層に生まれた人が隷属を強いられ、適正な賃金や扱いを受けられない制度 — が、世界各地で政府や企業、文化的慣習によって容認されていました。19世紀に大西洋奴隷貿易が終わっても、奴隷制そのものは多くの国で続いていたんです。実際、奴隷条約に沿って奴隷制を廃止した国として、モーリタニアが世界で最後になったのは1981年のことでした。
犯罪として取り締まられるようになっても、奴隷制は今も世界のあらゆる地域に影響を及ぼしています。
Ayanaを拘束していた側は、「航空券代、宿泊費、食費として3万ドルかかった。その分を返せば帰国させる」と言いました。こうした法外な請求は「債務奴隷(デット・ボンデージ)」と呼ばれる、現代奴隷制で最も一般的な形のひとつです。多くの場合、債務を設定する側が“返しきれない条件”を押しつけ、ほぼ完済不可能にしてしまいます。
「人をだましたくなんてなかった。でもお金を稼げなかったら罰を受けたんです」とAyanaは言います。「平手打ちされたり、殴られたり、電気ショックまで使われました。今でも腎臓が痛いです」
最終的にAyanaは、故郷の友人に連絡を取ることができ、帰国の航空券を買えるだけのお金を送ってもらいました。でもAyanaの体験は例外じゃありません。現代のテクノロジーを使って、世界中でさらに多くの人が狙われています。
「インターネットや、Instagram、Facebook、TikTokのようなSNSが、より多くの人を奴隷制へ誘い込むために使われています。特に若い人たちが狙われやすい」と小保方氏はGlobal Citizenに話しました。「オンライン上で相手がどんな人かを見抜いて狙い撃ちする手口が、どんどん高度化しています」
人身取引を行う加害者は、オンラインのチャットルームやゲームサイトに潜んで標的とつながったり、偽の求人広告を出したりします。狙われやすいのは、社会のなかで特に周縁化されている人たち — たとえばLGBTQ+の人、住まいのない人、紛争地域で暮らす人など。こうした人たちは貧困層に偏って含まれやすく、選択肢が限られることで、搾取する側が動きやすくなるからです。
ジェンダーに基づく暴力、そして有害な固定観念を生み続ける社会的な性別規範も、誰が最も狙われるかにますます影響しています。たとえば若い女性や少女は、性奴隷や従属的な結婚の形として人身取引されることがあり、十分な同意のないまま関係に入ることを強いられます。
さらに、社会全体で「もっと安い商品がほしい」という需要が高まっていることも問題です。景気停滞やインフレで家計が苦しくなると、企業はより安く、より早く生産する方法を探すようになります。
公正な賃金や労働環境への監視が弱いと、労働搾取や児童労働が起きやすくなります。影響を受けやすいのは、地方で暮らす労働者、移民労働者、貧困家庭の子どもたちです。国連薬物・犯罪事務所によると、強制労働は農業や漁業で特に多いとされています — ただし、搾取的な労働慣行と無縁な業界はありません。
「企業には、自分たちのサプライチェーンで何が起きているかを把握する責任があります」と小保方氏は言います。「ラテンアメリカやアフリカから原材料を調達するコーヒーチェーン、チョコレートメーカー、果物関連企業は、児童労働や強制労働で汚染されたサプライチェーンになっていないかを確認し、人権基準に沿う形でルールを整える必要があります」
どこでも奴隷制を終わらせるために、あなたができること
1926年の奴隷条約は、100年前と同じくらい今でも重要です。奴隷制がはびこる根本原因は今も残っています。一方で、奴隷制の“見え方”は現代に合わせて変化してきました。
国連の現代奴隷制および人身取引に関する特別報告者とともに、国連人権高等弁務官事務所(UN Human Rights)は、現代奴隷制の実態を明らかにし続け、政府、企業、生存者、労働組合員、市民社会と連携して、こうした慣行を完全に終わらせるために取り組んでいます。
世界中のGlobal Citizenも、次のヒントを参考にして、奴隷制の廃止や生存者の支援に動けます。
- 怪しい動きは法執行機関に通報する。犯罪グループは、場所を選ばず誰でも狙ってきます。オンラインのプロフィールに偽の写真を使ったり、個人情報を求めたり、人目につかない場所で会うよう促したりすることも。ネットに個人情報を載せないなどオンラインでの安全対策を徹底し、少しでも不審に感じたら法執行機関へ通報してください。
- 透明性のある労働慣行を求める。 労働搾取は、倉庫や農場、個人宅など、人目につきにくい場所で起こりがち。家事代行スタッフ、工場労働者、農業労働者は、特に低所得だったり、書類のない立場だったり、地方で働いていたりすると、正当な賃金が支払われなかったり、不公平な扱いを受けることがあります。友だちや家族、近所の人、そして雇用主とも話して、適正な賃金設定や公正な労働協約の導入、労働が搾取されない透明性のある文化づくりを進めましょう。
- 責任ある消費者になる。服やスマホ、食べ物まで、あなたが買う商品は、特に「安すぎる」場合、労働搾取や現代奴隷制とつながっている可能性があります。複雑なサプライチェーンのせいで、商品がどこから来たのかを正確に把握するのは難しいことも多いけど、Fashion Transparency Index や Open Supply Hub などのツールを使えば、お気に入りブランドがどこで調達し、どう製造しているのかを調べやすくなります。さらに、商品に Fairtrade Label が付いているかも確認して、環境面・社会面のルールに沿って生産されたものかの目安にしましょう。ただし、ブルーウォッシングの可能性も十分あるので、そのラベルは「調べ始めるきっかけ」として捉えるのがおすすめです。
- 国連「現代奴隷制に関する任意信託基金」に寄付する。1991年に設立されたこの基金は、現代奴隷制の被害を受けたサバイバーに直接支援を行う団体に小規模助成金を提供し、トラウマのケアや生活に必要な基本的支援につなげています。今すぐ寄付して、現代奴隷制と闘う取り組みに参加しましょう。
- 現代奴隷制について、オンラインで認知を広げる。 小保方氏はGlobal Citizenにこう語っています。「若者は社会変革の最前線にいます。自分のプラットフォームを使って、不公正な労働慣行について周りに知ってもらい、不公正な労働慣行に関わる企業に責任を取らせることができます」
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